【事業性評価講座】会社概要の『ヒト』をざっくり把握することからはじめよう!!

本日から【事業性評価講座】の連載ものをスタートさせたいと思います。

スタートは、会社概要で把握すべき『ヒト』にフォーカスをあてて紹介してきます。

金融機関の方で、これから事業性評価を始める方、すでに始めているがなんとなくインタビューしている方、会社の方で金融機関の事業性評価対応をしているが(金融機関が)何を聞きたいのか理解できない方等の参考になれば幸いです。

 

はじめに

『事業性評価』という言葉で難しくしている印象がありますが、簡単にいうと、会社のこと、事業のこと、経営者のこと等をよーく理解して、いいところ・悪いところを把握し、いいところはさらによくなるように、悪いところは少しでもよくなるような施策を考え・実行していくことが重要です。

 

『事業性評価』に限ったことではなく、会社のこと、事業のこと、経営者のこと等を理解することは、事業再生、M&A、融資等においても基本的に共通することであり、理解の切り口や、最終的な施策、打ち手、ソリューションが異なるだけだと思います。

 

私は、昔から、何事を理解するしても、まずはじめに全体像をつかみ、そこから各論の攻め方を考え、各論の検討・実行に入っていきます。

 

事業性評価においても、会社概要把握→環境分析(外部、内部)→経営課題等の把握→各種施策の検討→各種施策のPDCA実行、という流れで進めていきます。

 

会社概要を把握する目的

会社概要を把握する主な目的としては、以下のようなことがあげらます。

  • 最終的に経営課題等となるところを発掘するためには、事前にそのアタリをつける必要があり、広く浅く会社の全体感を理解することが重要
  • 会社概要を理解することにより、経営者、従業員との関係も深まり、近い目線で話しができるようになり、コミュニケーションもよくなる

 

事業性評価でも、事業再生でも、M&Aでも、融資でも、ソリューションや打ち手にかかわらず、会社概要を把握するのは基本中の基本です。

広さ深さには違いはありますが、把握する必要性があることには違いはありません。

 

ソリューション等により、目線や切り口も多少異なる場合があります。

例えば、M&Aでも、売り手側と買い手側では目線等は異なりますし、事業再生でもその立ち位置により債権者目線なのか債務者目線なのか、それとも仲介目線なのか等で把握すべき会社概要が異なります。

 

いずれにせよ、会社概要は重要で、私はオーソドックスですが、『ヒト、モノ、カネ、情報』という切り口で会社概要を把握するようにしています。

 

『ヒト』を把握しよう

『ヒト』の切り口では、主に以下を把握しましょう。

  • 経営者
  • 役員
  • 株主
  • 従業員
  • 組織(図)
  • グループ会社

 

経営者

中小企業でも一番重要なのは、もちろん経営者です。

大企業であれば、経営が組織化されているため、経営者が動かなくてもある程度は会社は動くと思います(時間の問題で衰退するかもですが)。

この点、中小企業は経営の組織化ができておらず、経営者の力で動いているのがほとんどです。

経営者を評価するというと大げさですが、経営者がどのような人物なのかを知ることが重要です。

 

主なポイントを簡単に紹介します。

 

資質があるのか

経営者に求められる資質は時代によって変化しますが、不変のものもあります。

論理的、誠実性、気力、体力、分析力、統率力、胆力、リーダーシップ、志、イノベーション、多様性、柔軟性、国際性、リスク管理能力・・・

 

あればあるだけいいというものではないですが、時代、その企業の風土等により求められる、必要な資質が異なってきますので、まずはどのような資質を持っているのか、どの分野が不足しているのかをきちんと捉えることが重要です。

不足している分野、弱い分野でかつ重要な分野については、何らかの形できちんと補完できているのかについても把握しておく必要があります。

 

年齢・経歴は

年齢・経歴で、良い・悪いの優劣をつけるのではなく、これまでどのようなことに携わってきたのか、どの分野の経験があるのか等をおおまかに把握し、推測することができます。

一概には言えず、例えばですが、年齢が若いと今後の時間もたくさんあるので、ある程度のリスクを覚悟しての攻めの経営ができる、反対に高齢だと攻めよりも次世代への承継に向けたソフトランディング思考とか。

経歴もどこ出身なのか、創業者なのか、世襲(2代目、3代目等)なのか、社内叩き上げ(営業系、技術系、管理系等)なのか、転職組なのか等により、経営者の得意・不得意分野を知ることができます。

 

家系は

家系も中小企業では重要な要素で、代々世襲型の会社では特に重要になります。

家系についてはプライベートの要素も含まれており、事細かに経営者等に聞きにくいことだと思いますので、何かきっかけがある時にきちんと時間をとって聞いてみたり、小出しに聞いてある程度全体を把握した状態で確認するといった方法で把握するのもよいと思います。

 

家系を把握することで、どの範囲まで経営に関与しているのか(なぜその範囲なのか)、影響力・発言力のある人物・家系はどこか、後継者はいるのか、相続上の課題はあるか等を知ることができます。

第三者が把握するのは難しいので、簡単な家系図を作成しておくのをおすすめします。

 

役員

上述しましたように、中小企業では実質的に経営者1人で経営していると言っても過言ではなく、役員は親族等がお飾り的に就任しているケースが多いと思います。

 

役員についても以下のようなポイントを中心に把握しましょう。

  • 属性(経営者との関係、後継者候補)
  • 年齢・経歴
  • 担当分野
  • 勤務実態
  • キーマン(社長の右腕)
  • 発言力・影響力

 

役員についても経営者の把握と同じ切り口で把握しておけば十分ですが、属性を把握し、なぜ役員に就任しているのか(親族等でお飾りなのか、銀行との関係維持のためなのか、出資者等からのガバナンスなのか、次期経営者候補等)、発言力・影響力はあるのかについてはきちんと把握しておきたいところです。

 

例えば、代表権はないものの元創業家がいる場合、大株主からの派遣されてる者がいる場合、第一線を退いた元社長がいる場合等、形式は平取締役等ですが影響力があり、実質的な経営者と言っても過言ではないケースもあります。

 

また、キーマン、社長の右腕的存在がいる場合には、経営には不可欠な役員であり、社内での発言力・影響力もあると推測できるため、経営のどの部分を担っているのか、どのような能力を持っているのか等についても把握することが重要です。

 

役員についても最低限把握し、社内での立ち位置・ポジションをきちんと理解することが重要です。

 

株主

中小企業の株主については役員と同じく、役員=株主=親族のケースも多いと思います。

 

株主についても以下のようなポイントを中心に把握しましょう。

  • 属性(経営者との関係)
  • 持株数・持株割合
  • 所有目的
  • 発言力・影響力(経営への参加)

 

ほとんど役員と同じですが、なぜ所有しているのか(所有目的)、株主として発言力・影響力はあるのか(経営に口を出してくるのか、物言う株主なのか)については最低限押させておくべきポイントです。

 

従業員

繰り返しになりますが中小企業では、実質的に経営者が一人で経営しているといっても過言ではないケースが多いですが、今後の事業拡大等のためには従業員はなくてはならない力となります。

目安として(完全に私の肌感覚ですが)、従業員が100名を超えてくると、経営者の目が行き届きにくくなり、属人的経営から脱却し組織的経営の必要性が増してきますので、従業員や組織の重要性も増してきます。

 

従業員についても以下のようなポイントを中心に把握しましょう。

  • 人数(部門別含む)
  • 平均給与
  • 年齢(平均・構成)
  • キーマン(社長の右腕)
  • 親族(勤務実態含む)

 

どのような従業員がどこに何名程度いて、どのような役割を担っているのか、事業継続に欠かせない能力を有している従業員はいるのか、経営者と従業員の関係(従業員はきちんと経営者と同じ方向性に向かっているか)等を把握しておく必要があります。

 

組織(図)

従業員と似た切り口ですが、特に今後規模を拡大していこうと考えている会社、まさに現在成長過程にある会社におては、属人的経営から組織的経営への転換が必要になりますので、会社概要においても組織について最低限押さえておく必要があります。

 

組織については以下のようなポイントを中心に把握しましょう。

  • 組織形態(業務分掌)
  • 権限と責任(職務分掌)
  • 経営実態との適合性

 

どのような組織形態をとっているのか、プロダクト別やエリア別等の事業別なのか、営業・購買・生産・人事・経理財務等の機能別なのか等について、各業務がどのように別れているのかをまずは押さえましょう。

中小企業でまだ組織を分けるほど従業員がいないステージの会社も多いとは思いますが、社長に業務管理機能が集中している状態が未来永劫続いていると、不測の事態があった時、経営承継の時に困りますので、事前に会社経営に必要な業務を意識しておく必要があります。

 

権限と組織についても、中小企業では馴染まないかもしれませんが、今後の成長を考えている会社においては、各従業員をどのような職位(ランク)に区分し、どのような権限と責任を与えているのかも重要となります。

 

最後に、現在の経営実態と組織が適合しているのか、実態から乖離し動きにくい組織になっていないかという切り口で組織を見ることで、組織の見直しの必要性も把握することができます。

 

グループ会社

ここでは、親会社、子会社等、(比率に関係なく)資本関係のある会社、会社と資本関係はないが経営者や親族が所有しいてる会社を簡便的にグループ会社と読んでいます。

 

グループ会社については以下のようなポイントを中心に把握しましょう。

  • 資本関係
  • 事業内容、役割、機能(存在意義)
  • 当社との取引内容

 

中小企業においては、経営上の必要性から会社を複数に分けているケース、経営上の理由ではなく財産承継のために会社を分けているケース(過去に相続で分けたが、現在は分けている意義に乏しいなど)等もあるため、なぜ複数の会社が存在しているのか、どのような役割、機能があるのか等を把握することが必要となります。

 

まとめ

まずは、事業概要における『ヒト』について把握すべきポイントを紹介してきました。

目的でも記載しましたように、あまり深入りせずに、『あれ、そこはなんか課題がありそうだな、深掘りするとなんかでてきそうだな』と感じ、会社の全体間をつかめることができるレベルで把握できれば十分です。

たぶん、これだけ経営者等にインタビューしてもお腹いっぱいになるレベルだと思います。

 

最後に、一番重要なのはやはり、経営者です、経営者の本心をなんとなく把握できるようになればかなりの上級者です。

 

次回は、残りの会社概要の『モノ』『カネ』『情報』について紹介する予定です(間に他のをはさむかもですが)。

 

 

最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

 

 

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  1. Luisa Sellers より: